オカルト系メディアのTOCANAが、2020年6月16日の記事で、米陸軍元少将のポール・バレリー(Paul E. Vallely)がカナダのラジオ番組でQアノンについて重要な情報を暴露したことを書いています。
それによると、Qアノンは「北バージニア軍(The Army of Northern Virginia)」と呼ばれるグループから得た情報をもとにしているとのこと。
そしてこれを暴露したポール・バレリーはトランプ政権とのパイプを持っていることから、Qアノンとトランプ大統領の繋がりが確定的となり、それによってQアノン信者が盛り上がりを見せている、ということです。
ところが、筆者がこの情報源となったとされる米陸軍元少将のポール・バレリーについて調べて(検索して)みると、この情報と矛盾するような過去のネット記事(2015年のもの)が発掘されて混乱してしまいました。
それによると、なんとこの米陸軍元少将のポール・バレリーは、イスラム過激派のアルカイダを主導し、さらにはISIS(イスラム国)の指揮官でもあった、という衝撃的なもの。
信ぴょう性についてはどの程度か分かりませんが、これについてまとめました。
先にちょっとした前置きをしますので、それに興味のない方は、目次の「米陸軍元少将のポール・バレリーはISIS(イスラム国)の指揮官だった?」をクリックしてそこからお読みください。
米陸軍元少将のポール・バレリーはDSの裏切り者なのか【複雑怪奇】
米陸軍元少将のポール・バレリーの証言に関する記事
おそらく、TOCANAの記事のもとになったであろう「PATRIOT’S SOAPBOX」の記事は次のようなものだったようです。
記事は自動翻訳なので不自然な日本語ですが、大意はTOCANAの記事と同様であることは分かります。
ポールE.ヴァレリー少将(アメリカ陸軍少将)がAmeriCanuckでショーホストのマイクフィリップからインタビューを受けました、2019年10月14日、カナダのインターネットラジオでは幅広いインタビューで、Q-Anon、Antifa、ディープステート、政治、そして米国が直面している最大の脅威。
ヴァレリー将軍は、マイクのチャットルームのリスナーから、「自分自身または自分自身をQと呼んでいるのは誰ですか?」と尋ねられました。
ヴァレリー将軍は次のように答えました。 「Q-アノンは「北バージニア軍」と呼ばれるグループから出てきた情報です。これは、大統領に助言する800人以上の軍事情報専門家のグループです。大統領はもはやCIAやDIA(国防情報局)にあまり自信を持っていません。したがって、大統領は、ほとんどが特殊作戦タイプの人々である実際のオペレーターに依存しています。ここで「Q」が彼の情報の一部を取得します。」
米陸軍元少将のポール・バレリーの経歴・素性など
そしてこのポール・バレリー(正確にはポール・E・バレリー)元少将の経歴や素性などは、TOCANAや次に引用する記事情報を総合すると、次のようなものだそうです。
- アメリカインド太平洋軍副司令官として軍部の高い地位にいた(TOCANA)
- 退役後は極右のシンクタンクに勤める(TOCANA)
- トランプ大統領の熱心な支持者(TOCANA)
- トランプ政権にも太いパイプを持つと見られる(TOCANA)
- NSAの元長官のマイケル・アキノ氏と共同でNSAと米陸軍心理戦訓練校を立ち上げた創設者の1人(次に引用するネット記事)
- 2000年~2007年まで、フォックス・ニュースの軍事アナリスト(次に引用するネット記事)
NSAといえばQアノンの主力となっている諜報機関として、またFOXニュースは長い間、ほぼ唯一といっていいほどの親トランプメディアとして知られています。(ただし最近、ワシントン・タイムズ、ニューヨーク・ポスト、ボストン・ヘラルドの3紙が相次いでトランプ支持を表明しました。これはまさに「革命」といってもいいでしょう)
米大統領選 保守系紙がトランプ氏支持 米紙の圧倒的多数はバイデン氏支持 https://t.co/d8nS43OglT
ワシントン・タイムズに加え、バイデン氏親子の疑惑を報じたニューヨーク・ポストが26日、過去にピュリツァー賞を何度も受賞している名門紙のボストン・ヘラルドが27日にトランプ氏支持を表明
— 産経ニュース (@Sankei_news) October 28, 2020
米陸軍元少将のポール・バレリーはISIS(イスラム国)の指揮官だった?
そして今回筆者が見つけた米陸軍元少将のポール・バレリーについての過去記事は次のようなもの(記事の日付は2015年2月4日とかなり古い時期のものです。つまり、今回のQアノンムーブメントは2017年10月の投稿に端緒を持つので、それより2年以上も前の記事ということになります)。
シリア 退役アメリカ軍少将ポール・E・ヴァレリーがアルカイダを主導していたことが判明
(引用者注:元記事はここに「シリア 退役アメリカ軍少将ポール・E・ヴァレリーがアルカイダを主導」という動画リンクと動画あり:動画は削除済み)
ベテランズ・トゥデーのゴードン・ダフ氏によると、ISISの指揮官は、元米陸軍大将のポール・E・バレー氏(Paul E. Vallely)であることが判明した。
(引用者注:元記事はここに「ISIS Commander Confirmed by Veterans Today」という動画リンクと動画あり:動画は削除済み)
バレー氏は2000年~2007年まで、フォックス・ニュースの軍事アナリストとして活躍。
フォックス・ニュースに出演しているISISのエキスパートと呼ばれる人たちは、実際は、ISISと連絡を取り合いながらISISの広報活動を行っているテロリストだということもゴードン・ダフ氏は確認した。元米陸軍大将のポール・E・バレー氏は、((悪魔儀式で)児童を生贄にしている組織の一部であるテンプル・オブ・セスのトップであった)NSAの元長官のマイケル・アキノ氏と共同でNSAと米陸軍心理戦訓練校を立ち上げた創設者の1人とのことだ。
信憑性については?だが、煙の立たないところに火はでないとも言うし、子供も皆殺しにするISISの殺人カルトぶりを見ると、本当に思えてきてしまう(以下省略)
記事は「バレリー」になったり「バレー」になったりしていますが、「ポール・E・バレー氏(Paul E. Vallely)」と英字の綴りは一致しているので同一人物です。
またバレリー元少将を「大将」としていますが、これはおそらく「General=ジェネラル(将軍)」を誤訳したのだと思われます。
そして先述の通り、この「バレリー元少将がアルカイダの主導者でなおかつISISの指揮官」だという情報は、彼がトランプ=Qアノン=ホワイトハット側だという情報と明らかに矛盾しています。
この記事は既に削除されたYouTubeの2つの動画をもとにして作成されたようですが、いったいどのような動画だったのかは不明です。
ただし記事内に、バレリー元少将がISISの指揮官だったという情報については、「ベテランズ・トゥデーのゴードン・ダフ氏による」とはっきり記載されています。
ベテランズ・トゥデー、ゴードン・ダフとは?
次にこの情報源となっている「ベテランズ・トゥデー」と「ゴードン・ダフ」という人物について調べてみました。
ベテランズ・トゥデーについては、ネットでは、
- 退役軍人向けのラジオ番組
- 親イラン・ロシア反米系の陰謀論サイト
さらにゴードン・ダフはそのウェブサイトの会長だという情報が見つかります。
ラジオ番組、サイト、と2通りの情報がありますが、おそらくサイトの情報をもとにラジオ番組も運営しているということでしょう。
重要なのは「親ロシア・反米系の陰謀論サイト」という情報です。
「陰謀論サイト」という言葉は、陰謀論が真実ならばむしろ誉め言葉として受け取るべきでしょう(陰謀の程度や性質はともかく、世界支配に関して何らかの陰謀があるのはほぼ間違いないと考えます)。
そして「親ロシアのサイト」ということですが、ロシアは陰謀論界隈では意外にもホワイトハットサイドとして認知されており、プーチンははっきりとイルミナティと戦うことを明言しているほどです。
であるならば、この情報はカバール=DS側が情報かく乱のために流布した可能性は低くなるので、相対的に信ぴょう性は高いということになります。
間違いである可能性としては、かろうじて、検索結果のみに(記事自体は既に存在しない)「中国が『ベテランズ・トゥデー』を情報かく乱に利用している」というYahoo!記事が存在していた形跡を確認できるのみです。

画像:Google「ベテランズ・トゥデー」検索結果の表示
米陸軍元少将のポール・バレリーはDSの裏切り者なのか?
謎すぎる…
この情報は本当ならの話ですが、ポール・バレリーがISIS(イスラム国)を裏から指揮していたという経歴は、カバール=DS(ディープステート)側にいたということであり、現在のトランプ=Qアノン、ホワイトハット側だという最近の情報と完全に矛盾することになります。
あるいは、ポール・バレリー元米軍少将は、カバール=DS側を裏切ってQアノンサイドについたのか、それとももともとQアノン側で、スパイのためにそのような任務に服していたのか…?
現時点では結論を出すことはできませんが、せいぜいここでは、状況といい情報といい非常に錯綜しているということだけがいえるのでしょうか。
この記事は以上になります。