陰謀論界隈で最近にわかに脚光を浴びているのが、「アドレノクロム」なる物質です。
そのアドレノクロムですが、実はWikipediaに堂々と記載されているものです。
したがって、それが巷で噂されるようなものかどうかはさておき、その実在性そのものには疑問の余地がないといっていいのかもしれません。
ここではこのWikipediaのアドレノクロムに関する記述を、要所要所を引用したりまとめながら解説してみます。
アドレノクロムのWikipedia記載を読む
基本的なアドレノクロムの特徴
まずは「化学的特徴」の項目です。
アドレノクロムは、前駆体のアドレナリンの酸化で生成される化合物である。化学式はC9H9NO3。止血効果があり、血管収縮剤としてアドレナリンが利用される場合の局所的な止血作用はアドレノクロムによるものである。[1]
(中略)
乾燥状態だと赤色もしくは赤紫色で、溶液中にはピンク色で検出されるが、重合すると茶色に変わる。
アドレノクロムは名前から分かる通り、アドレナリンに関係する物質だといわれていますが、実際に「アドレナリンの酸化によって生成される」と記載されています。
ただしその後の「止血効果がある」というのは、陰謀論界隈ではあまり聞かれないことです。
その止血効果ですが、アドレノクロムは不安定な物質なのでそのような利用には向かなかった、ということもWikipediaには記載されています。
また色は「乾燥状態だと赤色もしくは赤紫色で、溶液中にはピンク色で検出されるが、重合すると茶色に変わる」ということです。
アドレノクロムの脳への作用(Wikipedia記載)
次に「脳への影響」という項目では次のように記載されています。
1950〜60年代に15人以下の被験者を用いて行われたいくつかの小規模な研究では、アドレノクロムが思考障害や現実感消失症などの精神病反応を引き起こしたという報告がなされた。
この記述は一見、陰謀論でいわれるアドレノクロムの作用と関係ないようにも、あるようにも見えます。
というのもアドレノクロムのみならず多くのドラッグの作用は「現実感を消失させる」といえるので、その点は符合しているようにも見えますし、一方で陰謀論では「頭が冴える」といわれていることは「思考障害」とは真逆のようにも思えます。
一般に医学的・化学的作用の術語は、「思考障害」や「現実感消失症」のように、日常的な用語と異なって体感性に乏しい言葉を用いるので、体感的・体験的なものとしての薬物の作用はいまいち伝わりにくいところです。
かつては心の病の原因物質だという仮説も立てられた?
「脳への影響」という項目をすべて引用すると長くなるので要点だけまとめます。
誤解釈があるかもしれませんが、なにぶん理系ではない素人なのでその点はご容赦ください。
- 1950〜60年代ごろ、エイブラハム・ホッファーとハンフリー・オズモンドという2人の研究者によってアドレノクロムが心の病(統合失調症などの精神疾患)の原因となる物質ではないか、という仮説が立てられた。これを「アドレノクロム仮説」と呼ぶ。
- 彼らは統合失調症をビタミンCとナイアシンの大量投与で治療できると期待した。
- しかしそれらの「強力な抗酸化剤」による治療は物議をかもし、1973年にはホッファーによる統合失調症の研究に「方法論的欠陥」があったとされ批判され、治療の効果がないとされる追跡研究も出た。(要するにアドレノクロム仮説は批判される)
- 同様に米国、カナダおよびオーストラリアでも、彼らの治療法の効果が確認できないとされた。
- こうしてアドレノクロム仮説は、幾つかの有効な証拠はあったが、統合失調症においてアドレノクロムが確認できなかったために完全に衰退した。
- 2000年代に別の理由(wiki記述では『ニューロメラニン形成の中間体として通常生成される可能性がある』とのこと)でアドレノクロムに焦点が当たったが、同様に別方面からの否定的な発見が発表された。
アドレノクロム仮説
陰謀論界隈ではアドレノクロムは、人間が極限の恐怖などの緊張状態におかれると生成される物質だとされています。
統合失調症などの心の病は、その発症者当人にとっては正気を失うほどの極限の状態に置かれることで発症するので、これは意外に陰謀論界隈で言われていることと符号しており、「アドレノクロム仮説」は説得力を持っているように思えます。
ただしアカデミズムの世界では、既に否定され棄て去られた理論だということです。
日本でのアドレノクロム販売
さらにWikipediaの「利用と法規制」という項目では、日本では富士フイルム和光純薬株式会社が「D,L-Adrenochrome」として製造している、と記載されています。
実際に富士フイルム和光純薬株式会社のページを見に行き、アドレノクロムの分子式などが記載されている箇所を下にスクロールすると、25mgで希望納入価格20,000 円から販売されているのが分かります(ただし研究者などでない一般人が買えるのかどうかまでは分かりません)。
- 1g :販売終了
- 2.5g :販売終了
- 25mg :希望納入価格20,000 円
- 100mg:希望納入価格66,300 円
- 250mg:希望納入価格160,000 円
- 500mg:希望納入価格261,300 円
アドレノクロムは映画や小説にも登場
最後に「文化」の項目では次のように記載されています。
- 作家のハンター・S・トンプソンは著書の『ラスベガスをやっつけろ』(1971年)でアドレノクロムについて述べている。
- 映画版にも登場するが、その映画監督のテリー・ギリアムはその描写は誇張であるとしており、完全に架空のものだと考えている。
- トンプソンは別の著書『Fear and Loathing on the Campaign Trail ’72』でも再び言及、それは真夜中すぎの薄汚いホテルの一室でのことで、会話の記憶は酒とブタ肉と40㏄のアドレノクロムの大量摂取で朦朧としている。」という記述がある。
- アメリカのパンクバンド、グルーヴィー・グーリーズのデビューアルバムのタイトルが「Appetite For Adrenochrome(アピタイト・フォーアドレノクロム)」(アドレノクロムへの欲求、の意)
- テレビドラマ「オックスフォードミステリー ルイス警部」(2008)のシーズン1第2話「復讐の女神」の回では、生きた人間からアドレノクロムを抽出するという筋書きが用いられた。
- 2018年のトレヴァー・シムズ監督のインディペンデント映画に『アドレノクロム』がある。
そしてWikipediaの「文化」の項目の最後には、「アドレノクロムはしばしばオルタナ右翼による陰謀論で引き合いに出されることがある。」という手身近な記載があります。
この記事は以上になります。